衣装をお手本にしたい宵っぱりシネマ〜バンド・ワゴン〜

まだ子どもたちが小さかった頃。土曜の夜に子どもたちを寝かせたあと、夫婦で宵っぱりをして映画のビデオを観るのが楽しみでした。休日前の開放感。これから画面の中に映し出される見たことのな世界への期待で胸が高鳴りました。
そして今も週末に限らず宵っぱりをして映画を観ています。

劇場に観に行った映画については「寄り道シネマ」という記事に書いていますが、こちらはそのライト版。ジャンル、新作、旧作を問わず、私が「この映画のこの装い、このしぐさ、この住まい方は取り入れたいな」とお手本にしたい場面を切り取ってお伝えします。

今回はかなり古いミュージカル映画「バンド・ワゴン」より、これを観て憧れたプリーツスカートのおはなし。

バンド・ワゴン

この映画について、好きなあまりおしゃべりが止まらない気持ちを抑えつつ、少しお話ししますね。

https://www.imdb.com/title/tt0045537/mediaindex?ref_=tt_pv_mi_sm

MGM

「バンド・ワゴン」は1953年に公開されたMGMのミュージカル映画。

MGMはアメリカの映画会社で、公開当時は最盛期。大がかりなミュージカル映画を量産していました。映画の冒頭、ライオンがガオーと吠える、あの映画会社ですね。
さすがの私も公開時は生まれていませんが、「ザッツ・エンターテイメント」というMGMが創立50周年を記念して制作した懐かしのミュージカル名場面集のような映画で、「バンド・ワゴン」の中のため息の出る一場面を観たのです。

Story

物語は、かつて一世を風靡した落ち目のミュージカルスター「トニー」と、今まさに売り出し中のバレエダンサー「ギャビー」が、ぶつかりながらミュージカルの舞台を一緒に作り上げるお話。もちろんだんだん惹かれあうロマンスもありという、当時のミュージカルらしいストーリーです。

内容はシンプルだけどエンターテイメントが素晴らしい!「ザッツ・エンターテイメント」はこの映画のために書き下ろされた曲です。その曲名をのちのアンソロジー映画の題名にしたのですね。まさにショウビジネスの賛歌です。

キャスト

主役の二人のキャストをご紹介しましょう!

フレッド・アステア / トニー

https://www.imdb.com/name/nm0000001/mediaindex?ref_=nm_mv_sm

若い仕事仲間が言っていました。

「オードリー・ヘプバーンの映画で『パリの恋人』がいいって聞いたから観たんだけど、相手役が痩せたおじさんでがっかり!」

はい!この痩せたおじさんがフレッド・アステアです。「パリの恋人」の時はアステア58才。オードリー・ヘプバーンは28才。その頃はベテラン俳優と若手女優で恋愛映画というのはよくあることでした。
でもこの方、ただ者ではないのです!

ダンスの天才
タップの名手

その洗練されたダンスは、マイケル・ジャクソンも子どもの頃妹と「フレッド・アステアごっこ]をしたというほど、後の人に影響を与えたあこがれのミュージカルスターです。

年代としては1920年~60年くらいまで、活躍の場を変えながら息長く第一線で活躍しました。

ジンジャー・ロジャースとのエレガントなダンスで一世を風靡し、MGMのミュージカル映画ではジーン・ケリーと共に当時のミュージカル映画最盛期を担っていました。

ミュージカル黄金時代の終焉後、「タワーリング・イン・フェルノ」で俳優として渋い演技をご覧になった方も多いでしょう。

https://www.imdb.com/name/nm0000001/mediaindex?ref_=nm_mv_sm

写真のこのスタイルがトレードマークで、アメリカでは紳士の代名詞と言われました。ジーン・ケリーの情熱的なダンスとフレッド・アステアの洗練されたダンス、どちらも魅力的!

シド・チャリシー / ギャビー

https://www.imdb.com/name/nm0001998/mediaindex?ref_=nm_phs_md_sm

幼い頃からバレエを学び、14才でバレエ・リュス・ド・モンテカルロに入団しました。戦後、MGMの振り付け師にスカウトされて映画の世界へ。MGMの二枚看板フレッド・アステアとジーン・ケリーの相手役でブレイクしました。

https://www.imdb.com/title/tt0045152/mediaindex?page=6&ref_=ttmi_mi_sm

「雨に唄えば」ではワンシーンだけジーン・ケリーと踊りましたが、個性的でとにかく踊りが上手い!出番が少なくても強烈な印象を残しました。

https://www.imdb.com/title/tt0045537/mediaindex?ref_=tt_pv_mi_sm

シド・チャリシーの脚には500万ドルの保険がかけられていました。ほんとうに美しい脚線美です。

揺れるプリーツスカート

この時代は映画スターがファッションアイコンだったので、衣装が華やかで素敵です。

シド・チャリシーはボディコンシャスでスリットの深く入ったドレスが多く、踊るとスリットから美しい脚が見えます。この映画の劇中劇でもそんな衣装で登場します。

でも、わたしが何度も見直すダンスシーンでは、白シャツに、白いプリーツスカート、フラットシューズという普通の衣装です。普段着でトニーの部屋を訪れたあと、公園へ行ってふたりで踊り出すという設定。「Dancing in the Dark」の曲に乗せて優雅に踊るとプリーツスカートがとてもエレガントに揺れるのです。

ベルトとシューズがリンクしていておしゃれです。この衣装の時持っていたかごバッグの持ち手全体にはスカーフがぐるぐると巻かれていました。最近も流行りましたがこの時代のリバイバルでしょう。

時代を感じさせるセットですね。これ以降の映画はロケが多くなりました。

美しく揺れるプリーツスカートを夢見心地で観たあと、プリーツスカートをエレガントに着こなす大人の女性になりたいと思いました。

今でも必ず私のワードローブにはプリーツスカートが入っています。

スタイルアップという点では、私はプリーツスカートが得意ではありません。
でも、シド・チャリシーのようにプリーツスカートを優雅にはきたい。

そこで素材や形ができるだけ自分に合うように工夫します。例えばふわっとしないで、程よく落ち感のある素材を選んだり、ウェストからプリーツが入っていると腰回りがもたつくので、腰の途中からプリーツが入ったものを選んだりします。

颯爽と歩くと裾が揺れ、振り向くとふわっと広がります。踊るように着こなしたい憧れのスカートです。

まとめ

ミュージカルは言葉で伝えるところを、歌と躍りで表現します。バレエとミュージカル、異なるスタイルで反発していた二人が解け合う瞬間がこのダンスです。
なので、ふたつのスタイルをミックスした絶妙な振り付けです。

百聞は一見にしかず!YouTubeに動画があったので、解け合うダンスと揺れるプリーツスカートをご覧ください。

「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督は1985年生まれの若い監督ですが、作品の中にこの時代のミュージカル映画へのオマージュをふんだんに盛り込んでいます。

豪華なドレスも大好きですが、私たちの普段の着こなしのお手本になるような衣装に出会えるのが楽しみで、今日も映画を観てしまいました。

Style Season 黒滝伊都子

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