何だかエネルギーがみなぎっているとき、
どんどん前へ進んで行こうとしているときに気になる色があります。
それは「赤」です。
赤い色を見ると、人は無意識に血圧が上がり、脈拍も速くなり、筋肉が収縮すると言います。
「危険」のサインに使われるのは、意識していなくても目につきやすい誘目性のある色であると共に、すばやく身体を動かすことができるこんな理由からでもあります。
そんなパワーのある赤は、攻めの姿勢でステップアップしたいとき、それを後押ししてくれます。
その反面、目立ちすぎるのを好まない場合は敬遠したい色でもあります。
それでは赤のパワーを効果的に利用するためには、大人のワードローブにどのように取り入れたらよいでしょうか?
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あらためて赤という色について
「赤」はとても好きな人と、目立つから苦手という人にわかれる色でもあります。
あらためて「赤」という色について考えてみましょう。
赤いもの
「赤」と言えばなんでしょうか?
「赤い色」を感じてくださいね。
少し脈が上がってきたでしょうか?
色彩の魔術師といわれたアンリ・マティスはブルーのイメージがありますが、切り絵になる前の作品には「赤い部屋」やバックが赤い作品を多く残しています。
「赤い部屋~赤のハーモニー」
「赤のアトリエ」
「大きな赤い室内」
「金魚~Gold Fish」
赤い金魚は「楽園」や「パラダイス」の象徴と捉えられていました。
赤を感じる体験
思い出は色つきで覚えています。赤い色で思い出すのは「赤いサラファン」
「赤いサラファンやなぁ」
私の結婚式に参列するために、福岡から母方の叔父が駆けつけてくれました。
私の名前をつけてくれた叔父です。
結婚式の何日か前に到着して実家に泊まっていた叔父が、ラストスパートをかけ新婚旅行に着ていく私のジャケットとスカートを縫っていた母にかけた言葉。
「赤いサラファンやなぁ」
結婚式の衣装は白無垢と母が縫ってくれた白いウェディングドレス。それにもう1着お色直し用に貸衣装を選らんだのですが、当時は色数が少なくてピンクばかりでした。このラブリーなピンクが全く似合わない私。
試着を見ていた夫が「これを着てほしい」と選んだのが「赤いドレス」でした。私も母も「えっ?」と思ったのですが、試着してみたら思ったよりいい!ピンクよりずっと似合う!
そこで、夫の「赤い色好き」が発覚したため、新婚旅行用にも赤い洋服を縫ってくれていたのです。
洋服を縫ってもらいながら色々な思い出話に花を咲かせる母と私に、叔父はロシア民謡の「赤いサラファン」を重ね合わせたんですね。
ロシア民謡「赤いサラファン」
「サラファン」というのはロシアの民族衣装で、赤い色のサラファンは結婚式などの正式な場で着る衣装のこと。
赤いサラファンを縫いながら、結婚に乗り気でない娘とそれを諭す母親との会話を歌にしたもので、日本でも津川主一の訳で親しまれていました。
赤いサラファン 縫(ぬ)うてみても
楽しいあの日は 帰りゃせぬ~♪
誤解のないように断っておくと、決して結婚に乗り気でなかったわけでも、過ぎた日を惜しんでいたわけでもありません。場面がぴったりだったということですよ。
結婚直前の母との懐かしい思い出と共に、先だって他界した叔父のことが思い出されます。
みなさまの「赤を感じる体験」はありませんか?個人の体験によって色の印象は様々です。
赤い色の印象
いっぽう、人類の進化の段階から影響を受けたのではないかと言われている色や、その色をした「もの」から受ける色の印象は共通のものが多いです。
そこで赤い色から受ける一般的な印象をみていきましょう。
太陽の色、そしてほ乳類にとっては血の色。生命に直結する重要な色でエネルギーに満ちあふれています。熱くて、強くて、活発な印象があります。
命を司る「赤」からパワーを得たい、ということから魔除けや治療に使われる呪術の色でもあります。
ディズニー映画「ライオンキング超実写版」では冒頭、マンドリルのラフィキが生まれたばかりのシンバの額にバオバブの木の根っこをちぎって赤い粉を塗ります。お祝いと魔除けの意味があるのでしょう。
日本の神話では太陽の神「天照大神~あまてらすおおみかみ」が一番偉い神様なので、特に日本人は太陽の赤を特別に感じます。神社の鳥居などは赤く塗られていますね。
赤で象徴される火の色は、オレンジの炎のようにそばへ寄って暖めてくれるような穏やかな炎ではありません。一歩間違うと何もかも燃えつくしてしまうような激しさを持っています。
そういう意味では諸刃の剣。情熱や愛の炎も裏返すと強い嫉妬の炎になり、戦いの火種になります。
良くも悪くもエネルギッシュなのです。
レッド色々
赤には色々な赤があります。その一部をご紹介します。
青みが入っているクールな赤と黄みが入っているウォームな赤を対で載せますね。
紅色(べにいろ)
紅花から抽出する紅のクールな赤。本紅の口紅は今でも非常に高価だとか。
往年の女優エリザベス・テイラーはほんとうに真っ赤な口紅がよく似合う。赤い口紅は普段着とは違う自信をくれます。
朱色
鳥居の色は丹色(にいろ)とも言いますが、耳慣れないので、黄みの強い赤ということで朱色が想像しやすいと思います。
ルビーレッド
ルビーはピンク色っぽいものから濃い赤までありますが、日本語では紅玉と言います。ルビーレッドは濃い青みの赤い色。
コーラルレッド
コーラルは珊瑚のこと。淡いピンク色から赤い色までありますが、黄色みが入った暖かみのある赤です。
ローズレッド
紫がかった鮮やかな赤
ポピーレッド
こちらはオレンジっぽい鮮やかな赤
カーマインレッド
イタリアのスポーツカーアルファロメオの赤は黄みのない鮮やかな赤
イタリアンレッド
同じイタリア車のフェラーリは黄みのある赤。あこがれたなぁ。
ワインレッド
熟成したワインの深い青みの赤。ボルドーやバーガンディもワインの色。秋のワードローブで活躍する色です。
ブリックレッド(煉瓦色)
赤レンガの色。茶色っぽい黄みの赤。
こちらも取り入れると一気に秋らしくなる色です。
ワードローブに赤を取り入れる
ワードローブに赤を取り入れるとどんな良いことがあるでしょうか?
また、どのようにコーディネートすればよいでしょうか?
赤の3つの効果
大人のワードローブに赤を取り入れると嬉しい効果があります。
やる気を後押しする追い風になる
「負ける気がしない」と自信もやる気も満々の時はどんどん進みたいものです。目に付くところに赤い色を持ってくるとそれが追い風になってくれます。ある人はスクールを立ち上げようと突き進んでいた年、いつも赤いネイルを選んでいました。ある人は新しいことを学びはじめた年、赤い手帳を選びました。
自信があるように見える
戦隊もので主役は「レッド」ですよね。人々に対する熱い愛と、悪に対する強い怒りで戦いに身を投じていく。時々熱くなりすぎて冷静な「ブルー」にたしなめられたりしながら、それでも主役は「レッド」しかいません。立っているだけで目立つ色ですし、颯爽と赤い色を着こなしていると自信のある人に見えます。
特別感と高揚感
式典などで要人を歓迎するために歩行路として敷かれるレッドカーペット。古くは紀元前からその習わしがあるようです。
また、クリスチャン・ルブタンが、ハイヒールの底を赤いマニキュアで塗ったのが始まりだというレッドソールを愛してやまない女性がたくさんいます。
レッドカーペットもレッドソールもレッドだから特別感があり高揚するのでしょう。
赤い絨毯が敷かれた場所やルブタンのピンヒールパンプスはクラス感があります。
似合う赤はどっち?
トップスやワンピースに取り入れる場合は「似合う」を意識したいですね。
では、あなたはどちらが似合いますか?
「クールな赤」or「暖かみのある赤」
「明るい赤」or「濃い赤」
「鮮やかな赤」or「穏やかな赤」
私は暖かみがあって、濃いめの穏やかな赤が似合います。
似合うかどうか心配だったらボトムスや小物で取り入れてみてください。
ベイシックカラーとレッドコーディネート
夏は白と合わせて
白と合わせるとさわやかです。大人は鮮やかすぎない赤を選ぶと紅白の幕のようになりません。
鮮やかな赤なら黒小物を足すと大人っぽくなります。
ニュアンスカラーで上品に
ニュアンスカラーと呼ばれるベージュやグレーは赤を上品に見せてくれます。目立つのが苦手な方にもおすすめです。
インディゴと赤は最高に似合う!
インディゴが濃くても淡くてもお互いを良く引き立てる組み合わせです。普段着に気軽に赤を楽しんでください。
カーキと合わせて個性的に
赤とグリーンは反対色なので、両方が鮮やかだとクリスマスになってしまいますが、カーキと赤なら個性的なコーディネートになります。
黒でパワフルに
白と同じく、鮮やかな赤と黒は着こなしが難しくなります。
穏やかな赤と合わせるとパワーもあって上品な着こなしになります。
赤を使うとき気をつけること
パワーが落ちているとき
赤は良くも悪くもパワフルです。我が夫のように熱烈に赤が好き!というタイプもありますが、私は地固めをしたい時や、あまりパワーがない時は赤に目が行きません。
無理に赤でパワー注入するとおかしな方向にパッションが働いてしまいそうな気がします。
基本的に赤は好きだし似合う色でもあるので、そんな時はワインカラーのような深みのある赤を選びます。ブルーが隠れているので静かな情熱を感じます。
リラックスしたいとき
赤い色の食べ物はとても多いので、食卓に赤のような暖色は食事が美味しそうに見えます。
寝室のようにリラックスしたい部屋では、血圧が上がり、脈拍も速くなり、筋肉が収縮すると言われる赤は休まりません。
結婚当初、寝室のカーテンとベッドカバーを赤にしたい夫と、それを阻止したい私の折衷案は、ここでも深いワインカラーにすることでした。夏はちょっと暑苦しかったけれど、「ウィーンのザッハ・ホテルみたい」と妄想すれば悪くはなかったのです。
パワーが満ちあふれているとき、発散したいとき、赤を上手く取り入れてどんどん前へ進んでくださいね。
まとめ
◇やる気満々の時、赤は追い風になってくれる
◇赤は主役の色。自信をくれる
◇赤は特別で高揚した感覚をくれる
◇似合う赤を見つけた方はワンピースやトップスに。心配な方はボトムスや小物に取り入れると良い
◇赤が苦手な方でもニュアンスカラーやインディゴと合わせるとチャレンジしやすい
◇クールダウンしたいときは赤より青。赤を取り入れたいなら青が隠れているワインカラーを
最後に
色は様々なものに置き換えてイメージすることができます。
それでは赤をイメージする音楽は?
私は自分をその気にさせるのに、作業ごとにテーマ音楽を決めています。やろうと思っていた作業のテーマ音楽が流れると条件反射で取り組むことができます。
このコラムはアルゼンチンタンゴを聴きながら書きました。
情熱のタンゴです。
ピアソラの「Oblivion~忘却~」
内に秘めた情熱の赤ですね。
アル・パチーノの盲目の演技が忘れられない「セント・オブ・ウーマン~夢の香り~」から「Por una cabeza(首ひとつの差で)」首の差ひとつで恋の駆け引きに破れた男の失恋の曲です。
「タンゴを踊ろう」と誘われて躊躇する女性。「間違えるのが恐いの」「タンゴに間違いはないよ。足が絡んでも踊り続ければいい」と言って踊り出します。
ガブリエル・アンウォーがとっても可憐。深紅の薔薇を贈りたいですね。
若いクリス・オドネルも好青年で可愛い!
アルゼンチンタンゴはワインのような熟成した赤。
では、燃えるような鮮烈な赤は…
ホルスト作曲「組曲 惑星より~火星~」
「これかっこいい!」と言って長男が聞き始めた初クラシック曲。
SF映画のサントラ盤のようです。
普段クラシックは聞かないという方も「STAR WARS」がお好きなら楽しめると思いますよ。
みなさまは赤といえばどんな曲を思い浮かべますか?
Style Season 黒滝伊都子