私は比較的いつもご機嫌です。ご機嫌の源のひとつは仕事帰りの寄り道。
最近、ディズニー映画の実写版が目白押しですが、子ども達が小さかった頃DVDで何度も観たアニメーション映画「アラジン」の実写版を観てきました。
ウィル・スミスのジーニーが楽しみ!
今回の衣装はオリエンタルな民族衣装。
きらびやかな衣装とアラン・メンケンの音楽を堪能してきました。
コンテンツ
アラビアンナイト
「アラジン」は言わずと知れた「アラビアンナイト」の中のお話。
「アラビアンナイト」は「千夜一夜物語」「千一夜物語」とも言われますね。
そもそも「アラビアンナイト」って?
アラビア地方を中心として人々の間で伝承されてきたお話をまとめたものです。
この説話集をルイ14世に仕えていた東洋学者アントワーヌ・ガランが、アラビア語の写本からフランス語に翻訳して出版したのをきっかけに、世界中で翻訳され広まりました。日本語翻訳は明治8年。
でもガランが翻訳に使用したアラビア語の写本は282夜で結末はなし。
おそらく「千一夜」というのは「とても多い」という意味の例えだったようですが、律儀に千一夜分の話を集めなくてはと考え、その後、次々に加えられたお話はインド,イラン,イラク,エジプト,トルコ,ギリシアにまで及ぶ広範囲からの出典となりました。
アラジンと魔法のランプ・シンドバッドの冒険・アリババと40人の盗賊・空飛ぶ絨毯など、私たちが子どもの頃よく聞いたお話は後から加えられたものです。
ストーリー
昔々、ササン朝ペルシャにシャフリヤールという王がいました。
王はインドと中国も治めていました。
ある時、王はお妃の不貞を知り、妻と相手の奴隷たちの首をはねて殺しました。その後、女性不信に陥った王は、街の娘を妃にしては次々に首をはねてしまいます。
とうとう街には若い娘がいなくなってしまいました。そこで、大臣の娘シエラザードが名乗り出てお妃になりました。
シエラザードは毎夜毎夜、面白いお話を王に語って聞かせ、「続きはどうなる!?」と佳境に入ったところで「また明日~」とじらします。続きを聞きたい王はシエラザードの首をはねることなく、次第に優しい心を取り戻していきました。
という結末は、後でヨーロッパの人が付け加えたもの。
「アラジン」もシエラザードが語って聞かせたお話のひとつということですね。
バレエ「シエラザード」
リムスキー・コルサコフ作曲の交響組曲「シエラザード」に、のちに振付をしたのがバレエ・リュスのミハイル・フォーキンです。
浅田真央ちゃんが演目に選んでいた曲でご存じの方も多いかもしれませんね。
リムスキー・コルサコフは金管の力強いシャフリヤール王の主題とバイオリンのシエラザードの主題を掛け合わせながら、シンドバッドの冒険などのお話を曲にしましたが、バレエはそれとは別にシャフリヤール王が残虐な王となったきっかけの事件を題材にしています。
つまり、お妃の不貞事件。
この時の官能的な衣装がヨーロッパで爆発的にはやり、ハーレムパンツが広がりました。
レオン・バクストの衣装デザイン画
キャストと衣装
それでは、今回の実写版「アラジン」のキャストと衣装を見ていきましょう。
衣装デザイン/ マイケル・ウィルキンソン
衣装デザインはマイケル・ウィルキンソン
こんな映画の衣装を担当しています。
映画「 アメリカン・ハッスル」
敏腕詐欺師がFBIに協力して、おとり捜査で汚職政治家たちを逮捕していった1979年の「アブスキャム事件」を基にしたフィクション映画
この映画でアカデミー衣装デザイン賞を獲得しています。
映画「ジョイ」
アイデアひとつでゼロから億万長者になった女性の実話を基にした作品。ストーリーもキャストも話題になりましたが日本未公開でした。今はDVDで見ることができます。
映画「ジャスティス・リーグ」
DCコミックスのヒーローたちが集結したドリームチーム、ジャスティス・リーグの活躍を描くアクション大作
アラジン/ メナ・マスード
メナ・マスード
エジプト生まれのカナダの俳優。
ダイアソン大学で演劇プログラムを学び、テレビドラマ「Open Heart」のジャレッド・マリク役で知名度を上げました。
アマゾンプライム オリジナルドラマシリーズ「CIA分析官 ジャック・ライアン」のタレク・カッサー役で出演しています。
アラジンの衣装
アラジンの衣装は基本的には2着(エンディングで着替えますが)
前あきにエスニック模様の入ったストライプシャツにベスト。
ボタンが凝っていますね。このベストにはフードが付いています。
何だか現代の若者っぽいなと思って見ていました。
衣装デザインのマイケル・ウィルキンソンは現代の要素も取り入れたと言っています。そのせいか、ボリウッドにもっとヒップホップの要素を合わせたようなダンスの振付にぴったりなズボンでした。
「プリンス アリ」に変身してからはクリーム色にゴールドのゴージャスな衣装を重ねています。髪も短髪になってる。
ジャスミン/ ナオミ・スコット
ナオミ・スコット
英国ロンドン出身。自身の所属するバンドで歌手として活動していたところ、イギリスのポップスターであるケル・ブライアンに才能を見出されて、本格的な音楽活動を開始しています。
やがて、イギリス版ディズニーチャンネルのドラマで注目を集め、映画「パワーレンジャー」のピンクレンジャー役を演じています。
もうすぐ「新チャーリーズ・エンジェル」の公開がひかえています。ナオミ・スコットはプログラマーのエレーナ役で登場します。
ジャスミンの衣装
ジャスミンには多くの衣装がつくられました。
お忍びで街中に出かけたときの衣装。
走るとターコイズのパンツが見えてキレイでした。
お城に戻ってからは、パワーのある鮮やかな色の衣装が続きます。
手の込んだ豪華な正装と少しリラックスした装いもありました。ウィルキンソンは衣装でジャスミンの個性と自信を表したかったと語っています。
正装ではどこかにターコイズを使っています。アグラバーのロイヤルカラーはターコイズブルーなのかもしれません。
「A Whole New World」の場面ではやっぱりターコイズブルーの衣装。孔雀の羽の模様が繊細で美しかった。
音楽担当のアラン・メンケンは懐かしいアニメーション版のアラジンのメロディと共に、今回新曲を加えました。
それがジャスミンの歌う「スピーチレス~心の声~」です。「私を黙らせることはできない!」「心の声を叫べ!」ジャスミンの決意の叫びは圧巻でした。
ジャファー/ マーワン・ケンザリ
マーワン・ケンザリ
オランダ出身の俳優。オランダ映画「ウルフ」で注目され、ベルリン国際映画祭でシューティング・スター賞を獲得。この賞は将来有望なヨーロッパの若手俳優に与えられるもので、その後ハリウッドに進出しました。
映画「アウトバーン」
天才的なカーテクニックを持った自動車泥棒ケイシーが恋に落ち、一度は堅気になろうとしますが、彼女の病を治すため危険な大仕事に臨むことになります。
マーワン・ケンザリはケイシーの相棒役で出演。
映画「コードネーム・エンジェル」
エジプト政府高官の「アシュラフ・マルワン」が戦争を避けようと奮闘する姿を描いています。実話に基づく映画です。
この映画では主演を務めました。
ジャファーの衣装
ディズニー映画の悪役は魔法使いが多いですね。そして魔法使いの衣装は闇の黒と神秘的な紫の組み合わせ。
でも、ジャファーには燃えるような野心があります。だから闇の黒と炎の赤の組み合わせということでしょうか。それにマントは欠かせません。
徹底的に赤と黒。そして最後は真っ赤な衣装になります。大胆な模様が面白い。アニメーション版よりちょっとクールなジャファーの衣装はなかなか素敵でした。
ジーニー/ ウィル・スミス
ウィル・スミス
アメリカを代表するドル箱俳優。始めはラッパーとしてヒット曲を飛ばし、ゴールデングローブ賞も獲得しています。
「インディペンデンス・デイ」
私がはじめて見たウィル・スミス。軽妙な台詞と身のこなしがかっこよかった。
「メン・イン・ブラック」
ウィル・スミスといえば、やっぱりこれははずせない!
「幸せのちから」
ホームレスから成功をつかんだ実在の男性、クリス・ガードナーの半生を描いた映画。親子共演のジェイデン・スミスがキュート!
ジーニーの衣装
ジーニーは基本、全身まっ青にアクセサリーとベルトのみ
人間の姿になる時も衣装はブルー系。近くに寄ると草花の地模様が美しい。
アラジンの恋の悩みを聞くジーニーがチャーミングで笑いを誘います。
「プリンス・アリ・アバブアの行列」は遠くから響く太鼓の音が迫力ありました。大昔、恐れられたトルコ軍の太鼓ってこんな感じだったのかな?
弁髪にするかどうか迷ったようですが、やっぱりジーニーは弁髪に髭が似合う。髭も小さくきゅっと結んでいるのが可愛い!
エンディングでは黄色い衣装(もうブルーじゃないのね)
そしてもうひとつ、とっておきの衣装が用意されていました。色はピンクと黄色(衝撃的なので写真は載せませんが…)
「今までのキャリアはジーニーを演じるためにあった」とウィル・スミス自身が語っていますが、これまで何度も地球を救ってきたウィル・スミス、ラップのノリも良く、やっぱり軽妙でユーモアがあって、あったかくて頼れるジーニーでした。
民族衣装とトレンド
ファッションのトレンドに民族衣装を取り入れることがよくあります。このところはエスニック流行り。
民族的なファッション
エスニック
エスニックとは「Ethnic」=「民族の」「民族的な」という意味。
ファッションにおいてもエスニック柄は民族的な柄を指しますが、エスニック料理と同じく、主に東南アジアからアフリカにかけてのオリエンタルな民族柄やデザインを言う場合が多いようです。
フォークロア
良く混乱するのが、欧州や南米あたりの民族衣装風。こちらはフォークロア「folk+lore」=「民俗」+「伝承」といいます。
エスニックパンツ
エスニックパンツにも種類があります。こちらも何回か流行が繰り返しています。
ハーレムパンツ
ジャスミンがはいているのがハーレムパンツ。その名の通りハーレムの女性達がはいていたパンツです。
ウェストからたっぷりギャザーを取って足首できゅっと締まっています。19世紀末バレエ「シエラザード」の公演によってヨーロッパで流行しました。今でもベリーダンスをやられる方はお持ちだと思います。
アラジンパンツ
ハーレムパンツに似ているのですが、股下が下がってゆったりとしているのが特徴です。
サルエルパンツ
1970年代、パリコレクションに登場して知られるようになりました。私は80年代のMC・ハマーで知りましたが。
アラジンパンツのふくらはぎの所を絞った形です。ヒップホップの人達がよくはいていますが、元々は民族衣装から来ているものなんですね。
今回の映画でアラジンがはいていたパンツはこれに近いです。だからヒップホップの感じがしたのでしょう。
まとめ
◇ファッションは民族衣装や仕事着からインスピレーションを受けてデザインされることがあります。色遣いも、ジャスミンの衣装のように明るい色同士をぶつける傾向があるので、そんな点でもエスニック流行りなのかもしれません。
◇その時代時代に合わせて変化するディズニーキャラクターの魅力を感じた今回の寄り道シネマでした。
最後にディズニーとダイアナのコラボレーションで、「アラジン」のイメージのミュールやサンダルが出ています。元々刺繍使いの靴は流行っていたので、ワードローブに遊び心を取り入れるのにいいかもしれませんね。
Style Season 黒滝伊都子