私は比較的いつもご機嫌です。ご機嫌の源のひとつは仕事帰りの寄り道。
ボヘミアン・ラプソディの大ヒットに続いて、私たち世代には懐かしくも嬉しいアーティストの半生を描いた映画が公開されました。
「ロケットマン」
エルトン・ジョンの半生です。
ピアノを自由に操り、透明感のある歌声に魅了されました。
ディズニー映画「ライオン・キング実写版」でもエンディングに歌声を聞かせてくれましたが、シンバとナラのデュエット曲「愛を感じて」の美しいメロディはエルトン・ジョンによるものですね。
「ボヘミアン・ラプソディー」を最後にまとめ上げた監督と同じ監督の作品ですが、趣が全く違います。
華やかさも見所も多いのですが、最後は打ち上げ花火で華々しく終わるというよりは、後からじんわり来る映画でした。
エルトン・ジョンの曲と舞台衣装を楽しんできました。
コンテンツ
映画「ロケットマン」
「ロケットマン」はエルトン・ジョンの少年時代(1950年代)から1990年代までを描いた映画です。
エルトン・ジョン
グッチの花柄ジャケットを着たエルトン・ジョンですが、2018年、公演活動からの引退を発表して、現在最後のツアーを行っています。
理由はもっと家族との時間を大切にしたいから。
エルトン・ジョンはイングランドのミドルセックス州ピナー出身。4歳でピアノを弾き始め、一度聴いた曲は完璧に演奏してしまうという神童ぶりでした。
11歳で王立音楽院に合格して、そこで6年間学び、バッハやショパンの演奏を得意としていたようです。
10代の頃ロックに出会い、バンド活動を経て、作詞家バーニー・トーピンとの運命的な出会いの後ソロデビューします。
「Your Song」は最初のヒット曲で、若くしてたちまちスターダムへと駆け上がっていきました。
グラミー賞を5回受賞。すごい!のですが、すごければすごいほどそれを保って行かなくてはならないプレッシャーがある。
狂乱の時代もありましたがそれを乗り越え、70歳を過ぎた今も活躍しています。
ミュージカル・ファンタジー
「ロケットマン」はミュージカル・ファンタジーという位置付けです。
曲が誕生した瞬間やLAの初ライブの様子などの場面はありますが、基本的には年代などは関係なく、その時の心象をエルトン・ジョン自身の曲で綴るミュージカルです。元々ある「ABBAの曲」で綴った「マンマ・ミーア」みたいな感じですね。
そのため、エルトン本人はストーリーも歌も衣装も芝居も、そっくりの再現性にはこだわらず、それぞれの制作者のオリジナリティや解釈を入れてほしいと望みました。
美談だけではない部分も目を背けず伝えたいという本人の意向もあり、PG12指定になった表現もありますが、かと言って、見ている人が元気になるような明るい映画にしたかった。
その点、ミュージカルにしたことでいい加減にバランスが取れています。
たくさんあるエルトンの曲の中からチョイスした曲も絶妙で楽しめました。
キャストと衣装
衣装デザイン / ジュリアン・デイ
衣装デザインはジュリアン・デイです。
こんな映画の衣装を担当しています。
高慢と偏見とゾンビ
ダイアナ
ボヘミアン・ラプソディ
音楽界のスター達を描いた映画の衣装も多く手がけています。
エルトン・ジョン/ タロン・エジャトン
主演のエルトン・ジョン役はタロン・エジャトン
タロン・エジャトン
イングランド出身。王立演劇学校で学士(教養)を取得し卒業しています。平成元年生まれです。テレビシリーズに出演後、映画「キングスマン」に大抜擢。順調にキャリアを重ね若手俳優ナンバーワンの呼び声が高い。
コンピューターアニメーション映画「シング」でゴリラのジョニーの声を担当して、達者な歌声を披露しています。
キングスマンシリーズ
英国紳士のスパイアクション映画。
この映画でマシュー・ヴォーン監督とタッグを組んだことが「ロケットマン」の主演に繋がりました。
キングスマン: ゴールデン・サークルではエルトン・ジョンと共演しています。というか、そっくりさんか?と思って見ていたらエルトン・ジョン本人でした。
イーグル・ジャンプ
近眼で運動音痴な実在のスキー選手「マイケル・エドワーズ」の半生を描いた伝記ドラマです。
フッド・ザ・ビギニング
タロン・エジャトン版ロビン・フッドが2019年10月公開
全曲タロン・エジャトンが歌っています。なかなかの歌唱力です。
でも「それなりに上手く歌うことはできるけど、エルトンのようには歌えない」とタロン自身は語っています。
エルトンに生き写しというより、タロンが全力でエルトン・ジョンを演じている迫力があります。
エルトン・ジョンの衣装
時代は1960年代の終わり。
この時代のイギリスの子役はスーツにネクタイや伝統編みのニットなど、イギリス紳士をそのまま小さくしたような正統派の衣装が可愛いです。
タロンの登場シーンはこの衣装。
王立音楽院でショパンを演奏していた青年がやがてロックに目覚めます。地元でバンド演奏していた頃は「理由なき反抗」スタイル?ジーンズはキレイめですね。
1970年代により近くなると「ラブ&ピース」のヒッピースタイルが流行し始めます。特徴は華やかな柄、長髪、ベルボトム、ピチピチサイズなどのユニセックスなファッションです。未来を夢見て売り込みをしている頃の衣装。頑張ってる感じが装いにも感じられます。
LAの伝説的なライブハウス「トルバドール」での初ライブ。「もっと派手にして来い!」とお金を渡されて気合いを入れて選んだのがこの衣装?!
でもパフォーマンスは圧巻!
エルトンと言えば「キラキラお星様」を象徴していますね。
25歳で億万長者になったエルトンはどんどん買い物をしまくり、どんどん派手になっていきます。
成功と孤独。心の闇が深くなるにつれて派手になる衣装。シャイな自分を押し隠しパフォーマンスに命を捧げていきます。
衣装担当のジュリアン・デイがエルトンの衣装について語った映像があります。ひとりで全部オズの魔法使いの話はおもしろい!
「イエロー・ブリック・ロード」って「オズの魔法使い」に出てくる道ですよね。
バーニー・トーピン / ジェイミー・ベル
「彼の詩を前にすると自然に手が動いて美しいメロディが沸いてくる」という、半世紀を越えてコンビを組んでいる作詞家バーニー・トーピンはジェイミー・ベルが演じました。
この映画は二人のパートナーシップも描かれています。
ジェイミー・ベル
イングランド出身。バレリーナだった祖母や母の影響で6歳からバレエを始めます。2000人の応募の中から映画「リトル・ダンサー」のビリー役に選ばれ、英国アカデミー賞の主演男優賞を獲得しています。
リトル・ダンサー
炭坑町の硬派な父親と葛藤しながら、バレエの才能を開花させていく少年の話。13歳のジェイミー・ベル。
この映画に感動したエルトン・ジョンがミュージカル舞台化の進言をし、音楽監督を務めました。
キングコング
この映画がきっかけでスピルバーグ監督の3D作品「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」のタンタンを演じました。
「リヴァプール、最後の恋」
オスカー女優グロリア・グレアムと、駆け出しの若手舞台俳優ピーター・ターナーの最後の恋。
すっかり大人になりましたね。
バーニーは美青年だったらしいので、イケメンに育ったジェイミー・ベルはぴったりです。エルトン・ジョンも「リトル・ダンサー」以来19年ぶりに成長したジェイミーを見て喜んだとか。
バーニー・トーピンの衣装
バーニーはカントリー育ちのカウボーイ。エルトンがどんなに変わってもその基本はずっと変わりません。
長髪にベルボトムのジーンズ、柄Tシャツがむさ苦しくなくさわやか!
自分の詩を美しく歌い上げるエルトンの才能に目を輝かせる。その視線が素敵です。
どんどんエスカレートしていくエルトンの衣装とほとんど変わらないバーニー。
恋多き人で、結婚は何度もしているようですがね。
最後はゆったりとしたレザーにタックのパンツをはいていました。アイテムはほとんど変わらないけれどシルエットで変化を表しています。
ジョン・リード / リチャード・マッデン
エルトンのマネージャーで、最初の恋人と言われているジョン・リード役はリチャード・マッデン
リチャード・マッデン
スコットランド出身。11歳の時シャイな性格をなおすためにアートセンターで演劇を学び始めました。ロイヤル・スコティッシュ・アカデミーを卒業。テレビドラマで人気を得て、ディズニーの実写版「シンデレラ」で王子役に抜擢されました。
シンデレラ
リリー・ジェームスのシンデレラでは王子様役
BBC テレビドラマ : ボディーガード・守るべきもの
野心的な女性内務大臣モンタギューの警護に就くロンドン警視庁のデイビッド・バッド巡査部長を演じ、ゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞しています。
2020年11月6日に米国公開予定の、マーベルの新作「エターナルズ」で主演を務めることが決まっています。
ジョン・リードはクイーンのマネージャーとしても「ボヘミアン・ラプソディ」に出てきましたが、描かれ方がかなり違います。今回は悪役っぽい。ジョン・リードを知る人の印象も大きくわかれるようなのですが、やり手のビジネスマンであったことは確かなようです。
そして、今回は恋人役でもあるということで、やり手でしたたかな上にセクシーさも必要だったと監督は話しています。
確かに程よく濃いめで影のある感じがセクシーです。それに姿が美しい!
ジョン・リードの衣装
基本はスーツ姿です。
着崩した感じもセクシーで素敵です。
悪役要素があるのでダークでシャープな雰囲気の衣装でした。
鍛えているけれどスリムで上品なたたずまいは、イギリスの有名スパイの役なんかどうだろう?
シーラ・フェアブラザー / ブライス・ダラス・ハワード
この映画、女性も出演しますがほんの数分間です。
その中でエルトン・ジョンの母親シーラ役ブライス・ダラス・ハワードは紅一点。
ブライス・ダラス・ハワード
カリフォルニア州ロサンゼルス出身。父親は映画監督のロン・ハワード。ニューヨーク大学で演技等を学び、シェイクスピアやチェーホフの舞台を経て、スパイダーマン3、ターミネーター4などに出演。ジュラシック・ワールドで知名度を上げました。
ターミネーター4
医師でジョン・コナーの子どもを宿すケイト・コナー役
ジュラシック・ワールド
ヒロインのクレア・ディアリング役。つづく続編にも出演しています。
ブライス・ダラス・ハワードは、エルトンのアイデンティティーの確立(の阻害?)に大いに関わっている母親を演じています。
文章にするとひどい母親なのですが、ブライスの可愛らしい感じが何だか憎めない印象です。
シーラ・フェアブラザーの衣装
60年代を代表するような懐かしいワンピース。母親役ですが少女のような衣装です。
となりはシーラの母、エルトンのおばあちゃんです。二人ともエルトンの才能は早くから認めていました。
息子の成功に、屈託なく華やかな装いになっていきます。今のようにどこか外した抜けのあるコーディネートではなく、上から下までばっちり揃える時代でしたね。
中心を鮮やかに
冒頭のミュージカルらしい歌や踊りの場面の色彩が面白かったのです。
派手なオレンジの衣装のエルトン以外は一瞬白黒に見えました。ちゃんと色はあるのですが周りが薄めの色彩に見えました。
これがストーリーに通じているように思います。
エルトンを演じるタロン・エジャトンは全力で歌い踊り、熱演しています。とても色彩豊か。次がバーニーとの関係性。そして、その周りの人達は、いいとか悪いとか、あまりはっきりとした色彩を着けずに描いているように感じました。
まとめ
ある時、エルトン・ジョンと夫であるプロデューサーのデヴィッド・ファーニッシュがエルトンの半生を映画にしたら面白いと思い立ちました。
エルトンが大感激した映画「リトル・ダンサー」の脚本家リー・ホールに脚本を依頼し、10年かけて温めてきました。
「僕の人生は音楽」
というエルトンの映画はミュージカルにすることに決めていました。
機会が訪れたのは、エルトンの大ファンであるマシュー・ヴォーン監督の「キングスマン :ゴールデン・サークル」にカメオ出演したとき。
この時、10年越しの脚本をマシュー・ヴォーン監督に見せ、大いに気に入ったマシュー・ヴォーンがプロデューサーをやることになり、話がどんどん進みました。
キャスティングはこれからが楽しみな、3人のタイプの違うイケメン俳優が演じるべくして演じています。
制作総指揮のエルトン・ジョンの指示は「こうするべきだと思うようにやってくれ。自分のビジョンを実現させてくれ」だったそうです。
「エルトンが生き抜いてくれたから、この映画が撮れた」とデクスター・フレッチャー監督は語っています。
エンディングの曲はバーニーとの新曲で、深みのあるエルトン・ジョンのソロではじまります。
次に若々しいタロン・エジャトンのソロ。
そしてデュエットでリアルとファンタジーが出会います。
バーニーの歌詞は
「ありのままの自分を愛する」
この映画のテーマです。
映画音楽やミュージカルの舞台に意欲を燃やすエルトン・ジョン。
まだまだこれからも美しいメロディを聞くことができそうですね。
お好きな方は最後に2曲お楽しみください。
出だし1小節で虜になる歌声「Your Song」
ピアノマン ビリー・ジョエルとのピアノセッションで「Bennie and the Jets」